人里離れた山間の
谷の底には細い川が流れている
四季の移ろいを映しながら
春には山桜の花筏
夏には蝉しぐれが降り注ぎ
秋には錦の衣を川面が揺らす
冬は雪のつぶやきを聴き届けながら
日照りの続いたある日は
水が干上がり自分を見失ったものの
ある日は土砂降りが続き大洪水
泥が流れ込み水かさは増えて
濁流ととなり普段の貌を変える
すっかり自分を見失う
それでもいつしか 元の清流に戻る
魚が戯れ
天上に鳥の囀りを聴き
辺りに咲く色とりどりの花と語らいながら
いくつもの四季を巡り
谷底の川は流れる
流れの音をリズムとして
谷底の川は静かに歌う
密やかに
木霊を響かせている